私たちはなぜ、ある種の色を見て心を動かされたり、美しいと思ったりするのでしょう。
土、石、草、木・・・周囲の景色の中にそして足もとに存在するような素材から、私たち人間は眼にも鮮やかな「やきもの」を作り出してきました。赤、青、白など、言葉にすると同じ色でも、作家や技術によって色合いや鮮やかさ、透明感といった微妙な表情に変化が生まれます。そして、それぞれの色が生み出された背景には、個々の作家の工夫や努力、こだわりに加え、やきものに携わってきた人々の長い歴史が横たわっています。炎をくぐって現れた色彩には様々な秘密が隠されているのです。
本展覧会は、当館の収蔵品である陶芸作品の色に注目し、色彩に関わる素材の成分や技術、作家たちの工夫等を、手に取れる資料も用いてわかりやすく紐解くとともに、色彩の不思議さや陶磁器の面白さを感じていただこうとするものです。美濃は中世の昔より他地域と比較しても多彩なやきものをつくってきました。今もなお陶磁器を地場産業とするこの地域の人々が誇りを持って、創意工夫を重ねながら引き継いできた技術を、本人の手による資料やそれぞれの思いを織り交ぜながら紹介することで、より親しみ深くやきものと接する機会となることでしょう。今後の陶芸界を支える若い世代を、さらに、こうした作品を愛でる豊かな心を育てることを目指す展覧会です。