現代アイルランドを代表する画家リチャード・ゴーマンは、1946年ダブリンに生まれました。名門トリニティ・カレッジで経営学を学び自動車業界に就職しますが、少年の頃からの画家への夢を断ちがたく、30歳にして美術大学へ入学しました。面と線による単純な形と純粋な色彩で抽象美を追究する作品の数々は、欧米で高い評価を得ています。
当館では1999年開催の「リチャード・ゴーマン展 アイルランド──奇跡の抽象」において公立美術館としては国内で初めてゴーマンを紹介しました。彼と日本の関係は深く、90年代初め福井県今立町(現:越前市今立郡)に長期滞在し自ら和紙を漉くことから始まり、以後も定期的に来日しては大きいものでは畳一畳ほどもある和紙作品を制作しています。
「私の作品を見るときには論理的思考をつかさどる『左脳』を使って解釈しようとするのではなく、空間のつながりを感じる力をもつ『右脳』を使って色や形を楽しむ自由を味わって欲しい」と語ったゴーマン。ミラノにある質素な自宅兼アトリエから生み出される作品には、絵を描くという自らの道をひたむきに歩む彼の生活=人生そのものが結実しています。前回の企画展から10年余が経過した今、近年更なる展開をみせる画家の軌跡を油彩・版画65点によりたどります。