インドで生まれて中国で体系化された密教は、奈良時代にはすでにわが国にも伝えられてましたが、その奥義は弘法大師空海が唐での留学から帰国して初めてもたらされました。
空海自らが『御請来目録』のなかで「密教の押絵は深く言葉では語りつくせないので、仏画などの造形を以ってわかり易く私たちに説き示す」と述べているように、密教美術は、密教の説く真理を秘めた造形美術の宝庫と言え、その多彩さや豊かさは、我が国の仏教美術の中で群を抜いています。
本展は平安時代前期に焦点を合わせ、仁和寺、醍醐寺、金剛峰寺、教王護国寺、善通寺、神護寺等々に伝えられた宝物を通じて空海の思想世界を広く現代に問おうとするものです。真言密教創世記の息吹を今に伝える超一級の国宝・重要文化財が一堂に集うまさに空前絶後の機会となります。