今年は奈良県で平城京遷都(710年)から1300年を記念する、様々なイベントが開催されています。その内、奈良国立博物館で毎年秋に催されています「正倉院展」は天平文化の華やかさを堪能する催しとなっていますが、その天平文化は豊饒な唐時代文化の影響下に花開きました。白鶴美術館は縁あって、唐時代工芸の最良の作品(銀器・鏡など)を所蔵しています。この唐時代には、主に東西交易の主要ルートの一つであるオアシスの道(狭義にはこれをシルクロードと呼んでいましたが、現代では草原の道、海の道を併せてシルクロードと呼ぶことが多いようです)を通じて齎されたペルシャ・中央アジア等の美術に触発されて、中国美術史上の古典的傑作が生み出されました。
そのシルクロードを横糸に、悠久の昔から培われて参りました中国のものづくりの歴史を縦糸として、絢爛豪華に織り成された唐時代美術工芸の誕生・展開を考究し、かつ、主に19~20世紀のオリエント絨毯を通して、ペルシャ文化、また初期イスラム文化が花開いて行く頃に想いを馳せて戴きたいと思います。