2009年1月、世界的なグラフィックデザイナー福田繁雄氏が急逝されました。その知らせは、世界中に大きな衝撃とともに深い喪失感を与えました。しかし、氏によって残された作品は、デザインとアート界における貴重な遺産として、その評価がますます高まり、存在感が揺るぎないものになっています。
昨年8月、福田繁雄氏のご遺族のご厚意により、自宅アトリエに残された全ポスターをDNPグラフィックデザイン・アーカイブにご寄贈いただきました。
本展は、福田繁雄氏の追悼特別展として、またポスター・アーカイブを記念して、生涯制作された約1,200点のポスターの中から精選した作品をご紹介するものです。
福田氏は、生前、良いアイデアが閃くと、椅子から飛び上がって、「これだ!!」と心の声で叫んだそうです。本展のタイトルの中の「ヴィジュアル・ジャンピング」は、氏の生き生きとした創造行為の特徴を示す映像的シークエンスの中から拾い上げられたものです。
今回の展覧会では、氏によって電光石火のごとく創造されたヴィジュアル(ポスター)表現が、共通言語として、いかに国際的に抜きんでて、しかも説得力があったかについて焦点を当てたいと思っています。デザイン史に残る名作「Victory 1945」(1975年)の出現は、デザイン領域に限らず、あらゆる分野の人も呼び込んだ一つの革命だったと言えます。シニカルな思想に裏打ちされた高度なユーモアと独自のウィットが盛り込まれたポスターが、今も、世界中の人々の心を捉えて離さないことがそのことを物語っているからです。その他知られざる逸品も展示。海外からのメッセージや、アトリエや美術館での貴重なインタビュー映像等も交え、クリエイティブの現場をご紹介し、氏の偉業を浮き彫りにします。