アメリカの動物学者エドワード・シルヴェスター・モース(Edward Sylvester Morse,1838-1925)は、大森貝塚の発見者として知られています。明治10(1877)年に来日し、東京大学で教鞭をとることとなったモースは、在日中、日本のやきものに心惹かれ、『観古図説』(かんこずせつ)の著者、蜷川式胤(にながわのりたね)の手ほどきを受けながら、数千点におよぶ日本全国の様々なやきものを収集しました。現在、米国ボストン美術館にモース・コレクションとして保管されているこれらのやきものは、モース自身によって産地や窯、陶工別に整理・分類され、窯印や銘なども丹念に記録した目録にまとめあげられています。1世紀以上の時を経た現在の研究成果と比べると、その産地や年代が必ずしも正しいとは言えませんが、今日では手にすることのできなくなったやきものや、知り得ない情報が多く含まれており、大変貴重な資料と言えます。
本展覧会では、モースのコレクションカタログ『日本陶器目録』(Catalogue of the Morse Collection of Japanese Pottery)に登場する兵庫県下(播磨、摂津、丹波、淡路、但馬)のやきものに焦点をあて、当館所蔵作品でそれらの記述や特徴をご紹介します。