福田美蘭は、卓越した技術とユニークな発想で、見ることの本質を追求する「画家」として高く評価されています。グラフィック・デザイナーの福田繁雄を父に持ち、東京藝術大学大学院を修了後、安井賞をはじめ多数受賞するなど気鋭の現代美術作家として脚光を浴びてきました。
福田は、主体性を隠し、著名な名画やアニメのキャラクターなど誰でもがしているものを一つのコード(記号的要素)として捉えます。そして、そのコードを卓越した表現技法により巧みに取り入れ、筆と絵具というローテクともいえう方法で、既存のイメージを保ちながら新しいイメージを与えられた作品へと作り上げていきます。
鑑賞者は作品を展観することによって、芸術に対する固定観念をはずし、多角的に表現の広がりを感じるとともに、見ることの本質に気付かされます。時にはアイロニカルになる表現も、制作時の世界情勢を大きく反映し、「時代を映す鏡でありたい」という福田の制作の姿勢を表しています。
本展は、九州初の展覧会として初期作品から最新作、著名人のエッセイ等挿絵を含む約120点で構成されます。どこかで見たことのあるような作品に込められた仕掛けを堪能するとともに、見ることの本質と福田美蘭の世界観をお楽しみください。