平松画伯は、朝鮮半島、中国、インドとアジア民族にこだわり続け、土地に根ざした暮らしのある風景を求め、人々の営みを感じさせる作品を手掛けてきました。今回紹介するニューヨークをテーマにした作品群は、それまでの平松作品とは全く違った印象の都会の人口機能美を描く意欲作です。
第2次世界大戦の真っただ中で生まれた画伯は、アメリカ文化の洪水の中で青年期を過ごしました。戦後日本の美術が、アメリカのポップアートなどの新しい動向の影響を強く受け、西洋美術一辺倒になっていく中で、画伯は憧れと反発という矛盾する感情を抱えながら、日本画家としての道を歩んできました。
アメリカの象徴である摩天楼を真正面から描くことは、自身の葛藤に区切りをつけ、新たな一歩を踏み出すひとつの機会でもあったのでしょう。この後、作品のテーマは日本の伝統美の探究へと向かっていきます。
今回の展示では、ニューヨークシリーズの大作と共に、秋を感じる作品も同時に展示いたします。