古来より、黄金の輝きは人々から絶えず関心を集め、美術においてもまた、特別な意味を込めて永く用いられてきました。古代において、最高峰の飾り、また富の象徴として黄金製の装飾物が作られたことは、各地の出土遺物より知られます。加えて、東西の宗教美術において、黄金は、しばしば宗教者や宗教世界の聖性をあらわすものとして用いられました。また近世の日本では、背景を総金地とする大画面の金碧障屏画が隆盛します。そしてこれら黄金美術の意義は、踏襲されあるいは形を変え、近現代の美術にも受け継がれています。本展では、これら黄金を象徴的に用いた美術作品を「考古資料と仏教美術」「金屏風と桃山・江戸期の美術」「黄金美術とイコン」「近・現代の黄金美術」の4つの視点から取り上げ、美術における黄金の意味と魅力を探ります。
なお本展は、長く日本美術を研究してきた中野政樹名誉館長の企画でしたが、去る6月、急逝されました。本展の開催は、中野名誉館長を追悼するものでもあります。
前期:10/9~10/31
後期:11/2~11/28