歌川広重は、幕末に名所絵を描き、葛飾北斎とともに浮世絵に風景画というジャンルを確立させました。広重は全国の名所絵を残していますが、最も数多く描いたのは江戸名所でした。中でも≪名所江戸百景≫は、江戸名所の集大成とも言えるシリーズで、初代広重筆118点に、二代広重筆1点、梅素亭玄魚( ばいそていげんぎょ)筆による目録1点を含めた120点からなる大作です。これは、広重晩年の代表作であり、没年まで書き続けられました。この中で広重は、近景と遠景の極端な対比や、拡大されたモティーフの切断などといった視覚上のおもしろさ、また、当時最高潮に達していた彫り・摺りの技術を駆使するなど、工夫を凝らしています。一方、シリーズ中、「大はしあたけの夕立」「亀戸梅屋舗」は、ゴッホが油彩画で模写したことでも知られ、これらは、ジャポニスムを象徴するものとしても、しばしば取り上げられます。
この展覧会では、≪名所江戸百景≫全点を二期に分けて展示いたします。斬新な構図、何気ない江戸の風景など、江戸に生まれ、江戸を愛した広重の江戸への想いが込められた作品の数々をご堪能ください。
前・後期で全点展示替えいたします。
<前期>9/30(木)~10/24(日)
<後期>10/27(水)~11/28(日)