東広島市立美術館では、私たちの身近なところで現在展開している同時代的な美術動向を、着実な制作の歩みを見せる現代作家の活動をとおして紹介してまいりました。今日、美術を取り巻く状況は、多様化を深めるとともに、その位置づけ自体も崇高なものから身近なものへと変化を遂げつつあります。そうした中、当館では、人や生活と美術とのかかわりを造形の視点から捉えなおすことを目指し、「現代の造形-Life&Art-」をテーマに特別展を開催しています。
第5回となる本展では、東広島市の営みに主眼を据え、「農」と「水」をテーマに展開いたします。
本市は、往古より稲作を基幹とした「農」を営んできました。市内では、古墳時代の水田遺構が見つかっており、現在でも、県内最大の水田地帯となっています。三大銘醸地として名高い酒造業をはじめ、産業も「農」を基盤として発達してきました。「農」は古代より続く本市の根源的な営みなのです。
また、本市は、国土交通省によって水の郷100選に認定されるなど、親水都市として知られていますが、全国有数の溜池群があり雨乞い慣行が伝わるなど、水不足に悩まされた土地でもあります。水に事欠く土地でありながら、稲作や酒造業など水に立脚した産業を営むこの地にあって、人々は水を希い、水と葛藤し、豊かな水への創造(想像)力を常に抱きながら暮らしてきました。「水」は本市を象徴するエレメントなのです。
「半農半アート-水ありて-」と題した本展では、本市の根幹産業であり、人間らしい自然な生き方でもある「農」と本市のプライマリである「水」を美術造形することで、本質的な「Life」の要素を据えた「Art」の展覧会を開催いたします。作家たちの独自の表現世界をとおして、生活と美術と郷土の連関と、心豊かな生の営みを感じていただければ幸いです。