このたび笠岡市立竹喬美術館では、笠岡港近くの蔵にアトリエを構えて活動する川埜龍三(1976- )の展覧会を開催します。
川埜は、高知大学在学中よりモニュメント制作などのアルバイトを通じて、立体を造形するさまざまな技術を学びます。すべての作品は、その構想から完成まで自らの手仕事による混合技法で進められ、特にFRP(繊維強化プラスチック)を素材とした鋳造に高度な技能を発揮しています。
2001年9月、笠岡シーサイドーモールで個展「川埜龍三の世界~彫刻と絵画の32章~」を開催すると、岡山の美術界のみならず、一般市民にも驚きをもって迎えられ、翌年4月、第3回岡山芸術文化賞グランプリを受賞します。こののちも間断なく意欲的な作品を発表し、2005年に福武文化奨励賞、2008年にはI氏賞奨励賞を受賞しています。
このたび開催する展覧会は、川埜龍三の1994年(17歳)から2009年にいたる歩みを、約60点の平面と立体の作品により回顧しようとするものです。絵画や彫塑という従来の規範にとらわれることなく、己の心の奥底から湧き出てくるものと真摯に向き合い、一片の妥協もすることなく思索を深め、一人の新たな人間を創出するかのような川埜龍三の世界をご鑑賞いただけたらと思います。