東京国立近代美術館工芸館は、皇居の北側に位置する緑豊かな北の丸公園に、東京国立近代美術館の分館として、1977年開館しました。移築した国指定重要文化財の明治洋風建築が、美術館として機能しています。開館以前に収集された陶芸作品と、文化庁から管理換えされた重要無形文化財保持者の手になる伝統工芸作品を主としたコレクションを基盤に活動をスタートさせた後も、30年を超える永い歳月をかけて近現代工芸の流れを概観できるコレクションの形成が図られてきました。
本展では、この質量ともに充実した約2,900点のコレクションより、1950年代中頃以降の作品を対象に厳選した、陶磁、ガラス、漆工、木工、竹工、染織、人形、金工、プロダクト・デザインの名品を、「表現のたね-素材の魅力を引き出す」「創るおこない-研ぎ澄まされた技」「ひろがる表現-使う・眺める立場から」「白磁の造形-90年代以降の展開」の四章構成でご紹介いたします。
そもそも工芸とは何か、工芸で何ができるのか、何をしたいのか自問自答が繰り返され、新たな表現の大波が幾重にも盛り上がりを見せた1950年代中頃以降の日本工芸の来し方行く末を、心豊かに大観していただけますよう願っております。