奥谷博は、1960年代半ばに頭角を現していたり、旺盛な制作を続けて、風景、人物、静物などをモティーフとした大胆な構図と鮮明な色彩による独特の画風を確立し、今日の美術界の頂点に立っています。この間、日本藝術院会員に選ばれ、2007年には文化功労者に挙げられたのは、まさにその実力によるものと言えるでしょう。
同年には、パリのユネスコ本部で、日本の油彩画家として初めての個展「世界遺産条約採択35周年記念 奥谷博展―訪ねた世界遺産―」が開催されて、注目を集めました。
ここにご覧いただく34点の油彩画並びにデッサンは、初期の作品から今回新たに制作した「LANDSCAPE-〈海〉-」に至るまで、すべて、作者自らが選りすぐった現代に至る活動を凝集した代表作によるもので、一人の画家の思考と抱負とが至る所に充溢しています。
日本の近代絵画がようやく独自性を発揮し始めてから約50年間、この画家が、因襲にとらわれず、流行に感化されることなく、しかし強い意欲をもって営々と築き上げた画境には、他に見られないものが多々あると思われます。
常日頃、私たちの身近な美術について考えることの多い皆様には、共にご覧いただいて、それぞれの率直な感想をお寄せ頂けると幸いです。