鳥取県日野郡二部村(現・西伯郡伯耆町)に生まれた辻晉堂(1910-1981)は、第二次世界大戦後、陶などによる斬新な彫刻作品を発表し、戦後の彫刻界に独自の位置を占めた芸術家です。
辻は1931年に上京して独立美術研究所で洋画を学び、その後、彫刻に転じて
戦前・戦中は木彫を中心に日本美術院展に出品し、その迫真的な写実表現は平櫛田中などから高い評価を得て、1942年には32歳で最年少の日本美術院同人になりました。
1949年に京都市立美術専門学校(現・京都市立芸術大学)に赴任後は、抽象的な造形に向かい、1955年頃からは抽象的な陶による彫刻作品(陶彫)に精力的に取り組みます。
陶芸の常識を超えた辻の技法と表現は、走泥社同人らをはじめとする前衛陶芸家たちにも大きな影響を与えたと言われています。
また、1958年の第29回ヴェネツィア・ビエンナーレで《寒山》などを発表し、国際的な評価を得ました。
一方、得度した禅僧としての一面も持つ辻は、次第に「彫刻」という概念に
とらわれない境地に進み、晩年は自ら「粘土細工」と呼んだ、ユーモアと
自由が練り込まれた小品を数多く制作しました。
およそ四半世紀ぶりの本格的な回顧展となる本展覧会では、初期の木彫から、
独創的な陶彫作品を経て、晩年の小品に至る約110点の作品により、求道的とも評される辻晉堂の創作の全体像を紹介します。
尚、前期(1月29日-2月27日)と後期(2月29日-3月27日)で、一部作品の入れ換えがあります。