浮世絵を見て現代の人が感じる魅力のひとつに、その優れたデザイン性があります。大胆な構図、鮮やかな色彩、そして画面にアクセントを添えるコマ絵や装飾…。浮世絵が印象派を中心とした西洋美術に影響を及ぼしたことは広く知られていますが、彼らを魅了した大きな理由のひとつに、そのデザイン性が挙げられることは疑いの余地がないでしょう。
浮世絵の歴史を眺めてみると、それはまさにデザインの歴史とも言え、様々な構図や、色彩や、装飾的要素が少しずつ工夫され、長い年月をかけて発展したものであることが分かります。現代の商業デザインがそうであるように、浮世絵は商業的な枠組みの中で、版元や購買者のニーズにあわせて作られたものです。浮世絵を売るためには少しでも奇抜で人目を引くものを常に出版し続けなければなりません。そのため、絵師や版元は血のにじむような努力で新しい構図や、色彩や、画面を彩るデザインを日々考え出したのです。そうした過程を経て、幕末には浮世絵デザインの集大成とも言える、複雑なレイアウトや装飾を伴った高度な作品が大量に出版されています。
本展は江戸の人々を楽しませ、現代人をも魅了する浮世絵の高度なデザインが、どのように形作られていったのかを探る展覧会です。江戸の出版人たちの、細やかかつ大胆なデザインへの挑戦をお楽しみください。