目まぐるしく変貌する社会に対応し、時代それぞれに理想の女神像を創り出してきた華麗なるファッションの世界。20世紀になると写真という新しいメディアが、その熱い流行をいち早く伝達する役割を担うことになりました。ここに誕生したファッション写真は、他部門の写真とは異なったベクトルで進化を遂げ、モードと社会と綿密に連動し、支え合う特別な関係を築き上げてきました。
黎明期のレオポルド・E・ルートランジェにはじまり、初期のファッション誌を彩ったエドワード・スタイケンやホルスト・P・ホルスト、そして戦後のファッション界の活気を余すことなく写しとったリチャード・アヴェドンやアーヴィング・ペン、ウィリアム・クラインらが活躍した黄金期を迎えます。その後もヘルムート・ニュートン、ブルース・ウェーバー、ニック・ナイトなど、きら星のような才能が現実と虚構を巧みに織り交ぜながら、多彩な女性像の極みを摸索してきました。
本展は約100年におよぶファッション写真の歴史に描き出された魅惑的な女性美の変遷をアジェ、マン・レイ、セシル・ビートン、アーウィン・ブルーメンフェルド、ロバート・メイプルソープ、ヒロなど代表的な写真家約40名、約80点の作品で振り返ります。併せて被写体でもある19世紀末から現代までの時代を象徴する衣装を展示することにより、モードと写真の不可分な関係を再発見していただければ幸いです。