横浜に生まれ、東京で育った川上澄生(1895-1972)は、青年時代の北米放浪を経て、26歳で旧制の宇都宮中学校(現・宇都宮高等学校)の英語教師となり、ほぼ時を同じくして本格的に木版画の制作を手がけるようになりました。その後、戦時中の北海道疎開の数年間を除き、他界するまでのおよそ50年間にわたって宇都宮の地で制作を続けています。戦後は宇都宮女子高等学校でも教鞭を取ったことから、多くの教え子や弟子たちに恵まれ、親しまれ愛されてきた版画家といえます。
1920年代に隆盛をほこった創作版画運動ではその一翼を担い、脚光を浴びました。1926年に《初夏の風》を見た棟方志功が感銘を受け、ほどなく版画家を志すようになったことは、よく知られているとおりです。
しかし、川上澄生は生涯にわたって素人版画家であることを自認し、独自の創作世界を展開し続けます。日々の生活や少年時代への郷愁、そして江戸時代や明治時代への憧憬を南蛮ものや明治調の木版画に刻み、実に多くのイメージを世に送り出しました。
本展では、開館以来、長きにわたり川上澄生のコレクションを続けてきた栃木県立美術館の1000点に及ぶ所蔵品から、名品の数々をご紹介します。これまで未紹介だった水彩画による青年期の自画像や、川上澄生旧蔵の版画雑誌などの資料と合わせて、木版画、油彩画、水彩画、硝子絵、焼絵、絵本、おもちゃなど約500点を2期にわけて展観します。
※展示替えがあります。
前期:10/30~11/23
後期:11/25~12/23