柴田是真(しばたぜしん)が最近注目されている。是真(1807-1891)は幕末から明治中期にかけて活躍した絵師であり漆芸家で、当時大変な人気作家であり、帝室技芸員には明治二三年(1890)に制度が出来ると同時に任命された。明治初期から海外で開催されていた万国博覧会で是真の作品が紹介されると、その独創的で洒落た作風はたちまち海外の美術愛好家達の注目を集めた。その後、日本人の間で是真の名前はいつの間にか忘れ去られることになるのだが、海外では世代が変わっても、是真に対する評価が衰えるどころか益々高まる一方で、是真に対する研究もまた盛んであり、出版物も数多く出されている。その作品の大半は海外のコレクターや美術館が所蔵しているのが現状である。
是真は蒔絵の技法の研究にも熱心で、途絶えていた青海波塗(せいがいはぬり)を復活させるなど新しい技法の開発を行い、それらを駆使してお洒落で魅力に溢れた独創的な作品を多く残した。
是真没後は、一番弟子の池田泰真(いけだたいしん)(1825-1903)が、明治二九年(1896)帝室技芸員に選ばれ、是真亡き後の明治の漆芸界をリードしていった。泰真もまた、是真と共に考案した青海波塗や青銅塗(せいどうぬり)などの技法を駆使した魅力ある作品を多く残している。
今展では、当館所蔵の是真の蒔絵作品を中心に、絵画や泰真らその弟子たちの作品も合わせてご紹介します。