日本では数少ないタピスリーによる造形表現の第一人者、潮隆雄の近年20年間の制作活動を紹介する小企画展を開催します。
1938(昭和13)年、田辺市に生まれた潮は、京都市立美術大学(現・芸術大学美術学部)工芸科で稲垣稔次郎、小合友之助に師事し、卒業後本格的にタピスリーの制作に取り組みました。1961(昭和36)年、第4回新日展にタピスリー《水映》が初入選して以来、日展、日本現代工芸美術展を主な発表の場とし、日展特選、日展会員賞、現代工芸会長賞など数々の受賞を重ね、本年の日本現代工芸美術展では、出品作《波走る枯木灘》が文部科学大臣賞を受賞しました。
制作の初期から確かな織の技術を駆使し、抽象的な形態に心象を託す独特の表現を築いてきましたが、90年代以降はモチーフに具体的な形象が浮かび上がるようになり、限定された色彩と、幻想的ともいえる洗練された表現の世界を拓いています。
この20年間に展開された潮隆雄のタピストリー制作を約30点の代表的な作品によって振り返ります。