今日、きりえ作家として名高い滝平二郎は、はじめは木版画家として活躍し、昭和30年代からは、木版画・きりえなど様々な技法を用いた絵本さし絵の仕事に携わりました。なかでも斎藤隆介(1917~85)の童話に、きりえによるさし絵を添えた『花さき山』『モチモチの木』は、刊行されてから40年以上たつ現在も、日本の児童文学の名作として読み継がれています。また、昭和40年代半ばから約10年間は朝日新聞に毎週きりえを連載し、子供からお年寄りまで多くの人に親しまれるようになりました。滝平のきりえには、四季折々の村のくらしが描写され、それは今の時代においても見る者を幼年時代に呼び戻
すような魅力を放っています。本展覧会は平成21(2009)年に亡くなった滝平二郎を偲んで、初期の木版画・中期からの絵本原画と人気を博した新聞連載のきりえ原画等を展示し、滝平の画業をふり返ります。