常盤山文庫は水墨画や禅僧の墨蹟など、墨で表現された優品を数多く所蔵しています。本展ではすいぼくがと墨蹟を中心に新収の工芸作品を加えて、国宝2件、重要文化財13件を含む約50点を展示します。
常盤山文庫の水墨画は、禅宗寺院を背景に14世紀に描かれた初期水墨画が充実しています。いくつもの漢詩の賛を加えた詩画軸のなかでも、初期の作品として有名な「帰郷省親図」(重要文化財)をはじめとして、鎌倉末から室町時代にかけて描かれた水墨画を展観します。
墨蹟では「清拙正澄墨蹟 遺偈」と「馮子振墨蹟 易元吉画卷 跋」の国宝2点を展示するほか、13世紀に活躍した中国僧無準師範とその弟子たちの法脈を墨蹟の作品で辿ります。このように所蔵作品を通して法脈を辿れることは非常に珍しく、常盤山文庫の墨蹟が系統立てて収集されている証でもあります。また近年では中国当時や中国漆器の収集に力を入れ、その研究においても成果をあげています。今回はこうした新収蔵品のうち、禅宗寺院内での儀式の際や調度品として使用されたと思われる「青磁碗」や「犀皮水注」などを展示するとともに、「輪花天目盆」(重要文化財)の上に尼崎台にのせた茶碗を組み合わせるなど当時の用い方や飾り方を再現した展示も行います。