17世紀のバロック美術は、ルネサンス美術の伝統を受けつぎつつ、光による劇的な明暗の効果やダイナミックな動きにあふれた壮麗な宗教画や神話画を生み出しました。また一方では、市民社会の成立とともに、人々の生活に身近な主題を描く風俗画や風景画が盛んに描かれるようになり、その後の近代絵画の発展に大きな影響を与えました。
本展覧会では、17、8世紀のオールド・マスターから19世紀の近代絵画に至る油彩画を長年にわたって蒐集した『長坂コレクション』により、「伝統的な絵画手法によって描かれた正統派のヨーロッパ絵画」を、宗教画、世俗画、肖像画、風景画、風俗画に分けてご紹介します。
出品作家のほとんどは、ルーベンスなどの巨匠周辺や美術アカデミーで技法を学び、それぞれの国の伝統を継承した画家たちです。今日のようにいつでも名画を鑑賞できる美術館や展覧会がなかった時代にあって、一般の人々が身近なところで親しみ、生きる楽しみや喜びを感じたのは、時代を代表する巨匠たちの作品よりむしろその周辺で活動した作家たちの作品でした。
日本ではまだ馴染みの浅い「知られざる名作」による“もうひとつ”の西洋美術の流れを辿りつつ、その時代に生きた人々が絵画を愛でた喜びを感じてください。