人を描くという行為は人が生の記録をとどめたいという欲求と、神や美などの理想概念の具現を原点とし、科学的・解剖学的な発展とともに探究が深められてきました。「人のかたち」は個に対する自覚を促す反面、普遍的な形象ゆえに万人が共通認識する記号的な役割も果たし、また一方で魂や精神といった不可視の概念を象徴するかたちとして用いられてきました。
このたびの豊橋市美術博物館収蔵品展では、造形対象の原点ともいえるこの「人のかたち」を主題に、新収蔵作品を含めた1000点を越える美術作品のなかから日本画・油彩画・素描・版画等80点を紹介いたします。出品作家は岸田劉生・佐分眞・鬼頭鍋三郎・芥川沙織・水谷勇夫・三上誠・星野眞吾・大森運夫・森緑翠・中村正義・北川民次・島田章三・野田弘志・三尾公三など41名。「大正~昭和の人物肖像」「解体~象徴する人体」「版画・素描による表現」「人々の諸相」「幻視の人」といったテーマを部屋ごとに設け、大正期の緻密な写実表現から記号的・象徴的に人体を用いた前衛美術まで人物表現の多様性をご覧いただきます。