岩手県出身の熊澤明子(1976(S51)年~)は、染織で立体ができることに興味を持ち、多摩美術大学生産デザイン学科でテキスタイルを専攻しました。大学では特に人類最古の原始の布と言われるフェルトの技法に感動し、卒業後はフィンランドに留学。フィンランド特有の染織と技法を学んでいます。
熊澤は記憶をテーマにして制作し、主に羊毛と自分の髪の毛を素材として使っています。作品の多くはシンプルな造形を基本としますが、その大胆な発想と内省から生まれる豊かな表現はフェルトのイメージを覆すばかりでなく、観る者に新しいアートの誕生を感じさせられるものでもあります。これまでフィンランドやハンガリーなどを中心に制作発表してきた熊澤ですが、本展では熊野の森をメイン舞台に、熊澤独特の発想からなる森の記憶を表現します。熊澤自身にとってこの展覧会が日本初の個展であり、当館においてはご紹介したことのない作品と展示空間をお楽しみ頂くための初の試みとなります。
会期中、熊澤を講師に迎えて2回のワークショップを予定しています。この機会に多くの皆様に新しい作品に触れていただくことを願っています。
熊澤明子は昨年NPO和歌山芸術文化支援協会の企画「森のちからⅢ」で中辺路町に招かれたアーティストのひとりです。