堂本印象は、1891(明治24)年に京都に生まれました。1918(大正7)年に京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に入学し、翌年の第1回帝展に「深草」で初入選を果たしてはやくも画壇に登場しました。東洋の古典に西洋画を取り入れた具象絵画から、戦後の抽象絵画にいたるまで幅広い画業の展開は、日本画家のなかにおいても特異であるといえます。
本展では、この世に存在するもののかたちを超えて、こころの内側を表現することに徹した1960年代以降の作品を紹介します。「地上の形態を超えたる永遠なるものの美を、屈従と苦悩の伝統からでなく、抽象することによって、自由な公共芸術は生まれる」とは、堂本印象が1963年に残した言葉です。印象は、戦後の混沌とした日本で、人々の思考や社会状況が激変するなか、美の本質を既存の対象からこころの造形に求めることで、伝統を打ち破り、独自の日本画表現を目指しました。そして、「不可解な美」の姿をつかもうと意欲を傾けた作品群を、印象自ら「新造形」と名づけました。墨線や明暗それぞれの色彩が織り成す自由な表現のなかに芸術創造に向き合う画家の晩年の取り組みを読み取っていただければ幸いです。
前期:6月18日(金)- 8月22日(日)
後期:8月24日(火)- 10月24日(日)