クールベは1819年、フランス東部、スイスに近い小都市オルナンに生まれました。1840年、父親の希望で法律を学ぶためパリを出ますが、すぐに勉強を放棄して、画技の習得に専念するようになります。その頃、フランスの画壇は古典主義やロマン主義が主流をなしていましたが、クールベはそれらの理想化された、あるいは空想的な絵画表現を排し、現実をありのままに観察し把握することをテーマに掲げて制作を行いました。クールベのとりあげる題材はしばしば野卑で凡俗なものと見なされ非難も受けましたが、当時から詩人のボードレールらはその作品を支持し、視覚を重視した客観描写は後の印象派の画家達に影響をあたえるなど、今日、レアリスム(写実主義)の巨匠として高く評価されることになる傑作を残しました。生地オルナンにあるクールベ美術館の所蔵品を中心に、館長ジャン=ジャック・フルニエ氏の監修により開催される、日本でおよそ10年ぶりのクールベ展です。