『大坪美穂展 海界2010 -インスタレーションを中心に-』は、『海界』をメインに『黒いミルク』『サイレント・ヴォイス』という三つのシリーズで構成されています。
2008年に高知県の香美市立美術館で発表されたものを基本とし、この度フィリア美術館の第一展示室の木造空間にあわせて新たに展開したものです。
いずれも幾つもの小さな部分(〈こより〉や〈布玉〉など、単純な手作業を根気強く繰り返してかたちづくられたもの)が連なって大きな一つを形成しています。
作者は、これまでの歩みの中でたくわえられた様々な命の記憶(身近な人の死・多くの犠牲をともなったテロや戦争)に、ヌーラやツェランの言葉にひきよせられながら〈かたち〉を与え、平和へのを祈りをささげています。
吹き抜けの空間いっぱいに展開する『海界』は、視点(上から下から近くから遠くから)によって見え方が異なり、また見る人の状況によって受け取り方も様々なものとなりましょう。山の中の小さな木造空間にこの夏限りであらわれた海にたゆたって、自分の内側に呼びさまされる感覚に身をゆだねてみてください。
山の彼方、海の向こうにどのような世界があろうとも、わたしたちは平和な未来をつむいでいけるように願っています。