社会的にも激動の時期である1930年代後半期、「日本画」の世界において、伝統的美意識による創造に決別し、新たな表現を目指す活動が起こりました。舞台となったのは1938年4月に結成された歴程美術協会です。彼ら「日本画家」たちは、抽象やシュルレアリスムは言うまでもなく、バウハウスの造形理論をも取り込みつつ「日本画」を制作し、その展覧会場にはフォトグラムや工芸、盛花までもが並びました。
本展覧会は、この歴程美術協会を起点とした「日本画」における果敢な挑戦を、日本で初めて具体化された「前衛」意識と位置づけ、多角的に検証するものです。本展では、これらの「日本画家」たちが交流を深めた洋画家たちとの影響関係も探ります。また、戦争の拡大とともに未完の前衛と化した様相にも触れながら、歴程美術協会の戦後における再興とも言うべきパンリアルの誕生までを扱います。