茶の湯は、中国から伝来した喫茶を、独自に展開させた日本の重要な文化です。全盛期の桃山時代には千利休がわび茶を大成させ、日常から隔絶した茶室のなかに、非日常の世界が現れました。
その日のためだけに選ばれた道具を介して交わされた主客の対話とはいかなるものだったのでしょうか。やきものもまた、見立てられ、あるいは創意を注がれ、茶人や数寄者たちの思いを受け止めてきました。土肌を掌で味わい、釉景色を眺め、新たな形に心遊ばせるなど、美意識を投じてつくられた器は、現代においても新鮮な魅力を放ち続けています。
趣味や嗜好が極めて多様化しつつある現代では、茶の湯は衰微しつつあるのが現状です。それでもなお、ノスタルジーを超えた何かが人々を惹きつけてやまないのは、なぜなのでしょうか。本展は、茶の湯の歴史を遥かに仰ぎ見つつ、現代における自由な造形と見立ての美を探究しようとするものです。