「窯を開けるときはいつも驚きの連続」 この言葉に象徴されるように、93歳でこの世を去ったルーシー・リー(1902-1995)の生涯は、つねに瑞々しい驚きと発見に満ちた陶芸制作に捧げられたものでした。
ウィーンの裕福なユダヤ人家庭に生まれたルーシー・リーは、工業美術学校でろくろの面白さに魅了され、ほどなくその作品は国際的な展覧会で数々の賞を受賞し、高い評価を得ていきます。しかし、迫りくる戦争の足跡とともに亡命を余儀なくされ、1938年にロンドンに居を移すと、以後およそ半世紀にわたり同地で制作を続けました。バーナード・リーチやウィリアム・ステート=マリーといった英国初期のスタジオ・ポタリーの作家たちが作り上げていた、大陸とは異なる陶芸環境のなかで、ルーシーは当時の先鋭的な建築やデザインの思潮とも響き合う独自の様式を確立していきます。ろくろから生み出されるかたちに色彩と装飾が一体となり、静かでありながら強い存在感をもつその作品は、ルーシーが制作のなかで見いだした発見と喜びを鮮やかに伝えています。
没後初の回顧展となる本展では、20世紀を代表するルーシー・リーの創作の軌跡を国内外のコレクション約180点でたどります。