長年地球上の壮大な自然の営みを写し続け、海外からも高く評価されている写真家、水越武。彼は1938年、愛知県豊橋市に生まれ、幼い頃から山の自然に親しむ日々を過ごしました。
1965年、27歳のときに田淵行男(1905-1989)の著作『高山蝶』(1959年、朋文堂)に出会って感銘を受け、写真家への道を志します。以降、豊橋市の自宅から安曇野へ通い、さらには豊科町(現・安曇野市豊科)に移り住み、19年間田淵のもとで写真を撮り続けました。
水越武は1971年に穂高岳のみを撮影した写真展「穂高」を開催したのち、視点を山岳からその周辺に息づく動植物、そして地球規模での自然環境へと広げ、生命の持つ多様性と美しさを写し出しながら自然破壊への警告を発し続けています。
今回の展覧会では、彼の40年以上にわたる写真家活動の中で撮影された作品群の中から、「生態系から見た地球」というテーマに基づき厳選された約150点を展示します。水越武の豊穣な写真世界を一望する本展により、私たちの住む地球環境を再考する機会としていただければ幸いです。