バーネット・ニューマン(1905-1970)は、ロスコやポロックと並んで第二次世界大戦後にアメリカで勃興した抽象表現主義を代表する、20世紀のもっとも重要な画家のひとりです。大学では哲学を専攻し、当時の芸術家の中でも理論家で思弁的であったニューマンが、一色に塗られた画面に「ジップ」と呼ばれる垂直線を配した独自のスタイルに到達したのは43歳の時でした。単純で明快、ごく限られた要素で構成された作品は冷厳さに満ち、人間味を一切排した印象がありますが、その奥には深い感情が溢れています。ときに畏怖の念を感じさせ、ときに優しさの感情で包み込む彼の作品は、究極的には、芸術とは何かという根源的な問いを差し出します。 本展は川村記念美術館の開館20周年を記念し、当館が所蔵するニューマン晩年の大作《アンナの光》を中心に、絵画・彫刻・版画など約30点を紹介する国内における初のニューマン展です。果てしない自問自答を繰り返しながら、絵画の意味を伝えようとした芸術家の、その真摯な探求の軌跡をたどります。