本展は、大正13年に創刊され現在も多くの子どもたちに愛読されている科学雑誌『子供の科学』が、創刊以来紹介し続けてきた様々な工作記事図面から再現された工作作品を中心に紹介する展覧会です。
『子供の科学』は、近代化する日本にあって隆盛を極めようとする科学の本当の姿、《本物の科学》というものを、未来を担う子どもたちに伝えるために創刊されました。創刊者の原田三夫は、科学も芸術も美意識に裏付けられているという信念を持っていました。その精神は現在も貫かれており、これまでに愛読少年少女からノーベル賞受賞者も輩出されています。
ものづくりといえば、それは美術・芸術にも共通する行為であり、創造する美術作品であっても、自然の法則に則らないものは決して成功した作品とはいえません。古くはダ・ヴィンチが偉大な芸術家であり科学者であったように、また近年では東京藝術大学と理化学研究所が芸術と科学分野の協定を結んだように、芸術と科学の結びつきはもっと多様に取り組むべき事なのかもしれません。本展で紹介するのは、ごくシンプルな子供向けの工作ですが、科学雑誌が提供する工作も美術の制作も、本質的には同じ意識が必要なのだとういことを、この機会にもう一度考えてみたいと思います。
未来を担う子どもたちや現代社会を支える大人たちの、忘れかけた“ときめくこころ”を呼び起こすきっかけになれば幸いです。