人々の英知の集積である「本」は、古来より常に「文化」の中心を担ってきました。ときには記録と普及のために、ときには権力や財力の象徴として、文字が書かれたその時から、脈々と作られてきたのが「本」です。職人たちは、その時代時代の技術の粋を尽くし、また、とくに近代以降は、画家を中心にした芸術家たちがこの「本」の現場に参画するようになりました。それらは、まさに「本」を舞台に展開したもうひとつの美術史といってもよいでしょう。
今回の展覧会では、こうした「本」の歴史を、広島周辺に秘蔵される第一級の美術品を中心にして紹介します。なかには、国宝「平家納経」や、世界に数冊しか残っていない「グーテンベルク聖書」(零葉)、さらには近代の美本として名高いケルムスコット・プレスの全出版書籍などが含まれます。ぜひ、この機会に、東西の美本の世界をご堪能ください。