青磁は、鉄分を含んだ釉薬の還元焼成により、青緑色(または淡黄色)を呈する中国磁器です。なかでも、中国・南宋時代(1127-1279)に製作された青磁はもっとも美しく、それらが日本に輸出されたことは、博多から出土する陶片から知られています。端正な形や宙をおもわせる独特の色調は日本人に深く愛され、大切にされてきました。
さかのぼれば、昭和16(1941)年、開館まもない根津美術館が開催した「支那青磁展」は、青磁の美しさを日本に紹介した最初の展覧会でした。また当館は、青磁の優品を数多く所蔵する美術館でもあります。それからおよそ70年後に開催するこの本展は、青磁の美しさを改めて鑑賞いただくと共に、この間の日本における青磁研究の成果を示す展覧会でもあります。
砧青磁と呼ばれる龍泉窯の青磁をはじめ、南宋官窯の青磁や米色青磁と呼ばれる淡い黄茶色の作品に焦点をあて、日本に伝世した青磁作品を一堂に、国宝2件、重要文化財7件を含む、約70件で構成します。このうちの10件は、根津美術館が所蔵する作品です。会場となる展示室1では、国宝「青磁鳳凰耳瓶 銘 萬聲」や国宝「青磁下蕪瓶」、根津美術館が所蔵する重要文化財「青磁筒形花生 銘 大内筒」、重要文化財「青磁輪花碗」などの名品がその美を競います。さらに、展示室2では、博多、鎌倉、京都、東京などの都市遺跡から出土した南宋青磁の陶片群を展示し、日本に将来された青磁の足跡をご覧いただきます。