北海道出身の百瀬寿(1944年生まれ)は、岩手県盛岡市を拠点に、40年にわたって色彩のグラデーション(階調)をテーマとした作品を制作しています。
70年代から80年代前半にかけては、シルクスクリーン(セリグラフ)やスキャナグラフ(ネコ・プリント)などにより、色彩のぼかしだけで構成される版画作品を制作。80年代後半からは、彩色を施した手漉紙や金銀プラチナの箔を画布に貼り並べる平面作品を並行して手がけるようになります。「版のない版画」「描かれざる絵画」と評されたこれら独自の造形は、国内外で高い評価を受けてきました。
近年では、蛍光塗料を塗った複数の網を重ねるインスタレーションを発表するなど、新たな色彩とグラデーションの可能性への追求は、さらなる進化を続けています。
本展は、グラデーション表現の追求が始まる70年代以降の代表的な大型作品を中心に、初期から最新作に至るまでの約110点を展示して、その比類のない豊かな色彩表現の展開を辿ります。