絵師10人、驚愕の不協和音。
江戸時代は、文化が全国に拡散し、浸透した時代だといえます。絵画について見ると、上方を中心に栄えていた絵画文化が18世紀中期ごろにようやく江戸にも浸透し、官学御用絵師狩野派のほか、市民層の支持を得て民間画壇をも活性化してゆきます。
こうした活況のもと、日本各地に既存の流派にとらわれない個性的な絵を描く画家たちが登場してきます。彼らの絵は「畸人(きじん)」と呼ぶにふさわしい奇抜な表現と斬新な視覚によって描かれています。
寛政2年(1790)、伴蒿蹊により著された『近世畸人伝』は、あらゆる階層の有名無名の人々の奇異な行状を伝える人物伝です。本展はそれに倣い、陸奥、常陸、信濃、江戸、駿河、京、大坂、土佐の諸国より、18世紀後半から19世紀前半にかけて活動した10人の絵師を選りすぐり、48件の作品を紹介することで、江戸時代絵画の多様性と面白さをお見せします。
地元で大切にされたために中央で紹介される機会が少なく、一般にあまり知られていない絵師もいます。しかし、彼ら10人による強烈な表現力は、会場に驚愕の不協和音を響かせてくれることでしょう。