山種美術館は、所蔵作品の中心である近代日本画の中でも、特に日本美術院の画家の作品が充実し、院展出品作品だけでも134点を数え、春の院展出品作を加えると138点を所蔵しています。本展覧会では、院展出品作品を中心に、横山大観、菱田春草から小林古径、速水御舟、奥村土牛、そして平山郁夫まで、明治、大正、昭和、平成にかけて活躍した院展の画家たちの意欲的な作品の数々をご紹介します。
岡倉天心により、1898(明治31)年に在野の美術団体として創設された日本美術院は、茨城県五浦への移転の低迷期を経て、天心の一周忌に当たる1914(大正3)年9月に大観、下村観山らによって再興されます。彼らは、古典研究の上に絵画の新生面を開いていこうとする天心の遺志を受け継ぎ、個性を尊重した自由な制作に取り組みました。伝統絵画を学ぶ一方、ヨーロッパ絵画や東洋画から多くを吸収し、柔軟な発想と新鮮な感覚でそれぞれが独自の画風を創出していきます。特に当館所蔵作品の中心である大正から昭和にかけての日本美術院は、多くの気鋭の画家を輩出した黄金期といえましょう。大正期の大観《作右衛門の家》、昭和初期の御舟《翠苔緑芝》、古径《清姫》(3年ぶりに全8面展示予定)、昭和40年代の小倉遊亀《舞う》や前田青邨《腑分》など、個性溢れる作品と共に近代日本画発展の足跡をたどります。
昨年12月に惜しくも他界した平山郁夫(1930-2009)は、仏教やシルクロードを題材とした雄大かつ叙情的な作風で知られ、幅広い人気を博した日本画家でした。東京藝術大学学長として多くの逸材を育てる一方で、文化財赤十字の提唱や、ユネスコ親善大使として世界各地の文化遺産の保護活動などにも奔走しました。本展覧会では、現代の院展の重鎮であった平山を追悼する意を込め、山種コレクションルームに《バビロン王城》、《阿育王石柱》などを特別展示いたします。