アメリカ東海岸でも古い歴史をもつ街、ボストン。アメリカ建国100周年にあたる1876年、この地に開館したボストン美術館は、世界各地から集められた古代から現代までの約45万点もの美術品を収蔵する美の殿堂です。中でも日本美術コレクションは、明治初期、日本美術に魅了されたエドワード・モース(1838-1925)、アーネスト・フェノロサ(1853-1908)、ウィリアム・ビゲロー(1850-1926)ら有識者によって収集されたもので、その充実した内容で知られています。特に日本美術コレクションの中でも最大数を占める約5万点の浮世絵版画、約700点の肉筆浮世絵、数千点の版本は、日本国外では質・量ともに世界屈指のものです。しかし、これらの優れた作品群は、その膨大な量と作品保存の理由から近年までボストン美術館内でさえほとんど公開されることはなく、長年一般公開が待たれていました。保存状態が極めてよく、摺られた当時の鮮やかな色彩が、そのまま現代に伝わる稀少な例としても、いま再び世界中で注目を集めています。
本展覧会では、この膨大な作品群から、錦絵の黄金時代と言われる天明・寛政期(1781―1801)に焦点をあて、清長・歌麿・写楽の3人の絵師を中心とした選りすぐりの作品をご紹介いたします。出品作品のほとんどがボストン美術館に収蔵されて以来、初めての里帰りとなります。本展覧会終了後は、ボストン美術館内でも5年間は展示されることがないといわれる浮世絵の名品の数々を、この機会にぜひお楽しみください。