五穀を蓄え、また水を溜めるための当時の生活必需品であった壺や甕。その姿に見出される力強さと素朴さは,中世のやきものの大きな魅力のひとつです。これらのやきものは,小山冨士夫が唱えた「六古窯」という名称で親しまれ、最も日本らしいやきものとして多くの人々の心をとらえて離しません。
しかし、中世の窯業史観は、近年の全国各地における相次ぐ窯業地の発見によって大きく変貌しつつあります。これまで15世紀末以降には、瀬戸、常滑、越前、信楽、丹波、備前の六古窯に集約され、他の窯業地は消滅したと考えられていました。しかし、ここ30年間における全国各地の窯業遺跡80余ヶ所の発見によって、広域を商圏とした大窯業地から、在地の需要に応じた小規模なものまで、さまざまな窯業形態が明らかになってきました。
今回の展覧会では、六古窯で生産された代表作品を中心に展示すると共に、その他の窯業地で生産された作品もあわせて約150点を展観します。展示には国宝「灰釉秋草文壺」を初めとして、国宝1点、重要文化財11点を含み、中世のやきものの魅力とその全体像に迫ります。中世窯業史研究の集大成となる本展は、全国5会場を巡回する30年ぶりの大展覧会となります。
前期:1/2~2/9
後期:2/10~3/21