『三岸好太郎-昭和洋画史への序章』という1冊の本があります。三岸好太郎(1903-1934)の研究書の決定版で、著者は北海道出身の美術史家・匠秀夫(たくみひでお 1924-1994)。この本は三岸の創作の背景や、豊富なエピソードに彩られた生涯を余すところなく語るのみではなく、幅広い視点から同時代の絵画や社会状況までも生き生きと照らし出しています。
展覧会では、この本をベースに、日本近代美術のダイナミックな動きの中に三岸の魅力を再発見します。昨年のPart1に引き続き、今回のPart2では、早すぎた死を目前に前衛絵画に目覚め、蝶と貝殻の夢幻の世界、さらにモダン建築のアトリエと矢継ぎ早に新境地へとつき進んでいく様子を、日本近代洋画史の名作〈海と射光〉(福岡市美術館蔵)、〈蝶と裸婦〉(ポーラ美術館蔵)をまじえてお伝えします。また、当時の画壇に超現実主義(シュルレアリスム)の衝撃をもたらした福沢一郎の油彩、ドイツのバウハウスに学び、三岸のアトリエ設計を担当した山脇巌の作品もあわせてご紹介します。