高梁市成羽美術館では、今秋の「第25回国民文化祭・おかやま2010」開催に際し、高梁市の伝統的産業であり文化資源であった「備中漆」をテーマとする企画展を開催します。
漆は古くから日本で活用されてきた天然の塗料です。それは日本という風土の中で育まれた日本人の美意識と知恵と技によって、「漆芸」として高められ、伝統工芸として受け継がれています。
かつて備中漆は、その優れた品質から多くの素晴らしい作品を生み出してきました。しかしながら昭和39年、拠点である高梁市備中町のダム建設にともない漆木は水没し、漆掻き職人は他の仕事を求めて村落を離れて行きました。このような社会的要因によって一時途絶えたかにみえた備中漆でしたが、平成6年、(社)林原共済会と(財)岡山県郷土文化財団共同で復興事業がスタートし、今年で17年目を迎えます。
今展では、逸見東洋、難波仁斎ら岡山の名工の優品に加えて、復興事業の成果ともいうべき備中漆で仕上げられた人間国宝4名を含む29名の作家達による秀作群、さらには岡山漆工芸の今を伝える「郷原漆器」など約80点の展観を通して、備中漆に魅了された人々の営みを伝えたいと考えます。どうぞご高覧ください。