高橋節郎の漆芸作品はよく「幻想的」「神秘的」と評され、特に若い頃の作品からは「非常にモダン」な印象を受けると言われます。また高橋は、絵画や彫刻と同じ地平で鑑賞され語られる漆芸を目指し工芸界に団体を設立し運動を興したり、作品の制作においても漆の新しい観せ方を常に追求しました。
これらのことは、高橋が東京美術学校(現東京藝術大学)に学んでいた時代に日本で盛んに紹介された、欧米からの新しい芸術運動やその旗手たちの作品に、彼が大きな影響を受けたことと深く関係しています。ピカソやダリらに憧れた高橋青年が毎年観るのを楽しみにしていた国内の展覧会が、二科展の第九室でした。二科展ではちょうどこの頃、1930年代から、九室に前衛的傾向の強い画家の作品を集めて展示するのが慣例となっていました。38年には九室への出品作家を中心に「九室会」が結成され、独立した展覧会も開かれるようになります。
このたびの展覧会では、九室会の結成に参加、前衛から出発し戦後美術を牽引してきた作家、山口長男(やまぐちたけお・1902-1983)、斎藤義重(さいとうよししげ・1904-2001)、吉原治良(よしはらじろう・1905-1972)の油彩画などを取り上げ、高橋の作品とともに紹介します。前衛とはもともと、時代に先駆けていること、変革や革新、を意味します。高橋が感じた時代の息吹はどのようなものだったのか、前衛の作風や思潮はどのように影響を与えたのか、作品展示を通じて探ります。