なにげない風景の隙間に輝く不思議な魅力をとらえた、そんな独特の風景の写真で知られる市川市在住の写真家・中里和人(なかざと かつひと)。
1980年代、急速な開発により、新興都市へと変化を遂げようとする東京湾岸の様子を記録したデビュー作『湾岸原野』(1991年)。ありあわせの廃材で作られ、道端に静かにたたずむ、日本各地の小屋の姿を追った『小屋の肖像』(2000年)。身近な光景が白日夢のような世界に変化する不思議な瞬間をとらえた『キリコの街』(2002年)。漆黒の闇の中、初めてその姿を現す、深い夜の景色を写した『ULTRA』(2008年)。作品の対象の多くは、既に在りながらも目にはつかない、日常に埋もれた日本の景色の数々です。中里は、自分の足下に広がる身近な光景を視つめながら、その中に新たなイメージを発見し、景色が持つ多様な豊かさを見る者に提示します。
本展では、デビュー作から近年まで発表された写真作品約100点と最新の映像作品などを展示し、中里が追い求める写真世界に迫ります。移りゆくものの境界で、町や土地がふとのぞかせる、危うくも美しい横顔。デビュー以来変わらない視線で、日本の中にもう一つの異世界を探し求める「風景ノ境界」をどうぞご覧ください。
また、展覧会に先駆け、中里を講師として迎え開催した写真ワークショップ「〈絵ハガキの町〉市川 創出計画」で制作された、新しい市川絵ハガキセットの数々も展示いたします。子どもから大人まで、幅広い年齢層の参加者が、それぞれの視点で写し取った町の魅力。そんな魅力が沢山詰まった写真が絵ハガキに生まれ変わり、芳澤ガーデンギャラリーに新しい「〈絵ハガキの町〉市川」が誕生します。