寛政6年(1794)5月、豪華な雲母摺りの役者大首絵28枚を出版して浮世絵界に突然姿をあらわし、翌年1月までに140点をこえる浮世絵版画を制作しながら、その筆を断って忽然と姿を消した東洲斎写楽。
写楽は、その生涯が不明なため「謎の絵師」とも呼ばれています。
1910年、ドイツの浮世絵研究家ユリウス・クルトが世界最初の写楽研究書『SHARAKU』を刊行し個性的な画風が世界的注目を集めました。それから100年、「謎の絵師」写楽の正体探しがさまざまに行なわれてきました。しかし、写楽作品がわれわれの心を捉えるのは、その正体探しのミステリーではなかったはずです。作品が登場した時代の人々にとっても多くの刺激を与えていた単純化され誇張された表現は、現代に生きるわれわれの目にも新鮮な魅力に満ちています。本展は、その造形の魅力を解きほぐし、芸術的な特徴を明らかにすると同時に、写楽作品創造の源を探ります。
世界各国から集めた選りすぐりの写楽の版画によってその全貌を提示し、同じ芝居の同じ役に取材した他の画家の作品との比較により、写楽作品の独自性と魅力を現代に再提示します。