《黙示録》―ヨハネがイエス・キリストから啓示されたという、新約聖書の最後を飾る預言書―は、現世の終末の様子が記された異例の教典であり、西洋美術においてたびたび視覚化されてきました。この黙示録図像は、いまから約500年前に決定的なイメージを獲得しました。それは、ドイツ最大の画家・版画家、アルブレヒト・デューラー(1471-1528)による豪華な木版画集である《黙示録》連作(1497-98/1511)によってでした。
デューラーの《黙示録》が登場する時代、ヨーロッパでは印刷技術の向上によって。活版と木版挿絵を組み合わせた木版本が大量に出版されるようになりました。デューラーの《黙示録》は、書籍というメディアの先進性に着目し、当時の版画の概念をはるかに越える豪華な版画集を刊行したのです。この《黙示録》は、単なる書籍挿絵としてではなく、絵画に引けをとらない版画芸術としての輝きを放っていたのです。
デューラーの壮大な《黙示録》のインパクトは大きいものでした。その影響は、同時代のみならず、時代が下った19世紀においても見出されます。デューラーが制作した約400年後、フランス人画家オディロン・ルドン(1840-1916)による《聖ヨハネ黙示録》(1899)には、デューラーからの影響の痕跡を見ることができるのです。
この展覧会は、デューラーの《黙示録》連作を中心に、西洋美術における黙示録図像の変遷を、中世末期から近代までたどるものです。なお、この展覧会は、同時期に国立西洋美術館で開催される「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」の関連企画でもあります。この機会にぜひ、「黙示録」の幻想的な世界をご堪能ください。