土門拳は明治42(1909)年に山形県飽海郡酒田町(現 酒田市)に生まれ、7歳で東京へ、9歳の時に横浜へ移住、画家志望の中学生時代を過ごしました。
中学卒業後は職を転々とし、24歳で営業写真館の門下生となりますが、それに物足りなさを感じ、昭和10(1935)年に日本工房に入社、報道写真家として活動を始めます。文楽や仏像をはじめとする日本の文化や伝統美、日本人の暮らしを活写する眼差しは、このときに培われます。
しかし、戦後は戦中の国策宣伝に携わったことへの反省もあり、貧しくもたくましく生き抜く閉鎖された炭坑の子どもたちや、被爆の後遺症に苦しむヒロシマの人々など、敗戦国日本の現実と真正面から向き合い、リアリズムを追求しました。
また、昭和を代表する顔を捉えた《風貌》や、戦前から追い続けてきた仏教美術に迫るライフワーク《古寺巡礼》など、忘れがたい傑作を残しました。
2009年はその土門拳の生誕100年にあたり、本展はその記念巡回展となります。昭和10年から同54年までの足掛け45年にわたる作品から、土門が生きた時代を捉えた「激動の昭和」、鋭い目で選び出した「日本の美」約300点を一堂に展覧します。
その中には、この巡回展が初公開となる撮影当時のヴィンテージプリントも含まれています。この機会に是非ご鑑賞ください。