さまざまな人々が行き交い、幾多の文明や帝国が興亡し、キリスト教やイスラム教といった希有な世界宗教が生まれた地中海世界は、異質な文化・文明が衝突し、混交し、融和し、変容してきた、まさに世界史の縮図というべき地域です。
ギリシア・ローマ文明は、世界最古のオリエント文明の大きな影響を受けて地中海沿岸に成立しました。オリエント文明とギリシア・ローマ文明は地中海を舞台に活発な交流を繰り広げ、やがてヘレニズム文化、ローマ帝国による支配という形で、逆にオリエントに大きな影響を残しました。アルファベット、オリーブ油、ワインなど、現代日本に生きる私たちに馴染みになった文物も、地中海を舞台とした長い交流の歴史の中で育まれたものです。
この展覧会では、先史時代からローマ時代まで、地中海を舞台としたヨーロッパとアジア間の交流を示す品々、そしてその背後にあった人々の動きや営みをご紹介します。世界史理解の新しい視点の一助としていただきたく思います。