川上澄生は「木版画の詩人」と呼ばれ、豊かな詩情を持つ木版画家として同時代のなかでも特異な存在です。
澄生は青山学院中等科時代から投稿雑誌『文章世界』、『秀才文壇』などの舞台で鍛えられ、同高等科時代に同人誌『黒葉』で詩歌を発表、さらに1920年代後半以降は『詩と音楽』や『近代風景』で北原白秋に高い評価を得るまで磨かれるようになりました。川上は生涯詩歌を愛し、人生の喜びを詠いながら、時折、孤独な悲しみや嘆きを垣間見せます。やがて詩情は絵画へと生まれ変わり、《うなぢ》、《初夏の風》、《風船乗り》などの詩情豊かな版画が花を咲かせました。
本展は、「詩と版画」、「装幀の美」、「栃木県の文芸とともに」の3つの視点から、詩歌と版画の世界を紹介し、「木版画の詩人」としての川上澄生をあらためて見つめなおすものです。